2021/06/05 02:41

 毎年ゴールデンウィークに行う宝山窯の窯焚き。2021年も4月29日(木)に火入れを行い、5月7日(金)までの9日間にわたり窯の火を絶やすことなく、焚き続けました。多くの仲間たちの協力を得て、焼き上がる作品たち。本年度も素晴らしい作品が誕生しました。今回のブログでは、新作の紹介の前に窯焚き期間中のあれこれについてお話を少々。今年もいろいろとチャレンジさせていただきました!


 毎年、一般公開をしながら、その真髄を肌で感じていただこうと8年前から実施している「公開窯焚き」ですが、昨年に続き、本年もコロナ禍の煽りを受け、大々的なアナウンスはできませんでした。いつもであれば、期間中は400〜500名ほどの方々が窯場を訪れ、アメリカ、カナダ、フランス、スイス、スペイン、イタリア、台湾などなど海外からも多くの方がお見えになっていただけに残念でなりません。


 そのような中で最高の出会いも。画面左の萩原雅之さん。大学生でありながら「日本の伝統工芸を救いたい!」という熱い思いのもとクラウドファンディングに挑戦し、見事に目標達成!「モノゴト」という新ECプラットフォームを立ち上げるべく奔走していらっしゃる行動力あふれる方です。宝山窯でもバックアップをいただき、情報発信の面でいろいろと盛り上げていただきました。



 そんな萩原さんと計画し、実施したのが「オンライン公開窯焚き」。東京の光明寺で開催した完全限定のイベント「新しい出会いを、お寺で!」の会場と窯焚き中の窯場をオンラインで結び、来場者の方とやりとりをしながら、イベント会場では備前焼のうつわでコーヒーを召し上がっていただこう!というものでした。窯焚き期間中の5月4日(火)、5日(水)、6日(木)の3日間開催し、備前焼の魅力を発信させていただきました。


 備前焼とコラボしてくださったのは東京・三鷹台の「玉奎珈琲」さん。イベントを通じてお話もいろいろと。「心地の良い異質な経験を」をコンセプトとする小さな焙煎所からコーヒーを届けてくださいました。自らが訪れた農園のコーヒー豆を扱うというこだわりの逸品は、オンラインショップからもお買い求めいただけますので、興味のある方は是非!



 「hozangama lab.+」でもコーヒーカップを扱っていますので、是非ご覧ください。(こちらは新作ではないのであしからず…)コーヒーの苦味やエグ味を不思議と和らげてくれるので、新たなコーヒーの魅力を感じていただけること間違いなしです。磁器(春のパンまつりで景品になっている白いやきものの系統)やガラスのうつわと飲み比べてみても、味の違いが分かるので楽しさ倍増です!


 また、5月5日(水)には、萩原さんを中心に、備前焼に興味のある5名の大学生の方々(この後、1名参加)とのオンライン交流会も実施しました。素朴な質問から、ぐっと食い込んだ質問まで。これからの世代の方々が備前焼に興味を持ってくださっていることを大変嬉しく、心強く思いました。大学生ならではのアイデアや行動力にはこちらも学ぶことがたくさん。彼らと今後コラボできることがあればいいな〜と思っています。

 窯焚き中の窯場を一般開放しながら、オンラインで学生たちと交流した様子はNHK岡山放送局さんに取材していただき、列島ニュースとして全国放送に。このような厳しい状況下ながら、備前焼を全国へ発信する素晴らしい機会をいただき、本当に感謝しています。(写真は大阪のお客さまより)


 「大変な作業である窯焚きこそ楽しく!」手伝いに駆けつけてくれる仲間たちが、リラックスして作業に臨めるよう、環境を整えることも窯主の大切な仕事だと思っています。時にはホルモンの煙に煽られながら、仲間たちと備前焼のあれこれについて語り合う時間もかけがえのないものでした。


 コロナが収束したら、焼きイモでもかじりながら、備前焼ファンの皆さんと語り合えたら楽しいだろうな〜と、来年度の窯焚きに向けて美味しい焼きイモの研究も。窯の余熱と備前焼の陶片を使ってほっこりと焼き上げる「石焼きイモ」ならぬ「窯焚きイモ」は、今の時代にフィットするSDGsな仕上がりとなりました!

 窯の正面焚口から見た窯内の様子。実際に見るとオレンジ色や赤色ではなく、真夏の太陽を見るように、白っぽく感じられます。今回の窯には約2500点の作品が入り、約1200束の薪を使用しました。正面から存分に薪を投入し、しっかりと焚き込むことで、深い焼き色となり、灰のかかった部分には「胡麻(ごま)」という変化が現れます。

正面の部屋が焚き終わると、次の部屋へと移ります。写真は、さらにその後の「二番(前から3番目のアーチ構造の部屋)」を焼成する様子。正面の焚口とは違い、側面から投入する薪は細いものを使います。両サイドから息を合わせて薪を投入するので、2人体制での窯焚きとなります。


 一部屋ずつ焼き上げて、仕上げは作品の周りへ木炭を振りかけていく「炭くべ」の作業。木炭のガスの影響などを受け、多彩な変化が生まれます。備前焼でよく見られる「桟切(さんぎり)」という焼き色はこの作業によって生まれます。


 最後の部屋は、初挑戦の酸化焼成。明るい焼き色を目指し、焚き口にフタをすることなく薪を継ぎ足していく方法で焚き上げていきました。ワラを巻いていた部分が赤く発色する「緋襷(ひだすき)」という変化は果たして…、といった大変楽しみな部屋となります。


 窯の部屋ごとに詰め方や焼き方をいつも以上に変えてみた2021年の窯焚き。窯出しを待つ窯場の雰囲気もなんとも言えないものです。次回ブログでは、窯出しに際してのあれこれと、新作についての紹介をいたしますので、楽しみにしていただければと思います!


オンラインショップ「hozangama lab.+」

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