2021/06/02 22:32

 窯元 宝山窯の作品320点に続き、5月31日(月)からは、作家 森 敏彰の作品120点を追加しました。作品だけ並んでいても、なんだかよくわからないな〜ということで、今回は、森 敏彰が作品をつくるときに何を考えているのか、作品についての解説を交えながら、少しだけお話したいと思います。

 作陶におけるコンセプトは「シンプルな形を組み合わせて新しいカタチを生み出す」こと。基本となる「球形」や「筒形」はろくろを使って成形し、後でくっつけていきます。形を揃えてろくろをひくことや、重くならないようにすること、ヒビが入らないようにすることなど、ポイントも多くあります。最近は時間がなくて、このシリーズをみっちり作れていないという状況ですが、アイデアはたっぷり溜まっていますのでどこかで爆発することと思います。


 また、薪窯で焼成することによって生まれる多彩な変化も大きなポイントです。こちらは「球形」や「筒形」のシンプルなカタチをそのままに、窯の中でどのような「景色」が生まれるのかを「やってみた」という作品です。ちょっとした好奇心もあって、チャレンジングな状態で焼成することも多々あります。想定を超えてくるワクワク感がここにはあります。


 ちょっと遊んだシリーズでは、このあたり。備前焼に関わる素材を何か活かせないものかと、窯焚き後に出る松割木の灰を再利用して焼成した、今で言うところのSDGs的な逸品たちです。カップはマットな質感に仕上げており、これをツルッとしてほしいという要望に応えて飯茶碗が誕生しました。なかなかの限定品です。


 だいぶん遊んだシリーズがこちら。カップやマグの取手について散々ウンチクを語られた後に、解釈を間違えて誕生した、左手しか持てない、あるいは右手しか持てないというやや大きめのマグと、安定の悪いうつわは使いにくい、座りがどうこうと散々語られた後に、またしても解釈を間違えて誕生したゆらゆらと揺れるカップ。どちらのシリーズも、不思議と人気となっています。あの時の「語り」に感謝です。


 最後の紹介はこちらの宝瓶たち。普段は電動ろくろを使って作陶していますが、昨年は、電動ろくろも石膏型も使わず、土の塊から成形していく「手捻り」にチャレンジしました。祖父の「宝山」が生前、手捻りで宝瓶をつくっていたのを思い出しながら、当時愛用していた手回しろくろを使って制作。用途を度外視した鳳凰のつまみには祖父も驚いてくれることと思います。やりすぎの「霊獣シリーズ」と安定の「植物シリーズ」。自分の中ではかなりやりきったので、次回の制作はしばらく先になりそうです。


 成形に関しても、焼成に関してもチャレンジの先にあるワクワク感はなんとも言えないものです。次回のブログでは、今年のゴールデンウィークに行った窯焚きや、窯から出てきた新作についてのお話ができればと思います。是非とも楽しみにしておいてください。