2021/07/01 02:41


 『閑谷學(しずたにがく)』は、岡山県立和気閑谷高等学校で実施されている教育の一環で、「閑谷学校」の学びの精神を引き継ぎ、地域との関わりを重視しながら、自ら学び、自ら考える姿勢と、問題を解決していく力を身につけることを目標としています。昨年の4月に「備前焼を盛り上げる方法を考え、”実践”するゼミの講師をしてほしい」という依頼をいただいたことがご縁で、講師として授業にお邪魔することになりました。


 初年度は8名がゼミに参加してくれました。最初の授業では、「備前焼を盛り上げるアイデアを考える前に、まずは備前焼についてのお話を。」ということになり、備前焼の歴史を軸に、その性質や産地の話、地形や天候、植生の話、「当時の商人ならこう考えるよね〜」といった経済の話など、まずは興味を持ってもらえるように、いろいろな展開を図りながら講義をさせていただきました。


 続く授業では、限られた時間の中で、生徒のみんなが「やってみたいこと」と、こちらが「提供できること」をすり合わせ、実現に向けてのスケジュールを披露。ゴールから逆算して、「今日やるべきことはこれだ!」という流れで、以後の授業を進めていきました。

 具体的に取り組む内容については、いろいろと話し合った結果、「今までにない新しい備前焼を作ろう!」ということになり、最初の作業では、どのような場面で使ってほしいか、各々がイメージし、デザインした図案をもとに、成形を行ないました。「自然を感じながら…」などと調子に乗って屋外で行った挙句、想定どおりの表面がパリパリになる事態に見舞われ…。帰ってからの仕上げ作業にかなりの時間を割くことになりましたが、多くの生徒や先生の目にも止まり、なかなかのPRとなった時間でした。


 ここで言う「今までにない新しい備前焼」とは、釉薬をかけたり、絵を描いたりしない備前焼に、カラーリングをしてみようというもの。釉薬となると少々飛び過ぎの感もあるので、備前焼の技法にもある「塗土(ぬりつち)」を発展させることにしました。素材も市販の顔料を使うのではなく、身近なものをテストしてどんな色が出るのかを実験しようということで、まずは、集めた素材を細かくすりつぶして粉末状にする作業を行いました。


 素材をすりつぶした後は、調合。事前に準備していた素材も使い、調合の比率を変えながら、11素材33種類のテスト塗土を作りました。代々続く備前焼の窯元に生まれた私にとっては、新しい扉を開くような感覚で、まさに探究の時間。備前粘土との化学反応がどのようなものになるのか、楽しみも膨らみました。


 会場を備前陶芸センターに移した回では、どのような発色になるのか、素材研究を担当する男子グループの4名が、テストピースを作成。前回の授業で調合を行なった塗土を、素焼したテストピースに塗っていきました。


 日生の「Stella Café」さん協力のもと、スイーツのうつわをデザインする女子グループ4名は、事前のテストで安定した成果を得ていた「閑谷学校の楷の葉」「日生の牡蠣殻」を使った塗土で、以前制作したうつわに、カラーリングを行いました。この日は、サプライズで校長先生もお見えになり、生徒たちの取り組む「新しい備前焼」に興味津々のご様子でした。


 そして、あっという間に成果発表&引き継ぎ会へ。「備前焼を盛り上げる方法を考え、実践する」ことをテーマに、取り組んでいた挑戦もここで一区切りです。作品とテストピースも無事に焼き上がり、ここで披露となりました。


 男子グループは、備前焼の塗土技法を発展させたカラーリングを研究。地域の素材を集め、備前粘土との反応を実験しました。研究成果は「テストピース」。なかなか地味ながらいい仕事をしてくれました。


 女子グループは、日生のカフェ「Stella Café」さんとコラボして、スイーツに合う新しい備前焼を作ろうという内容。自らうつわを成形し、男子グループが研究していた塗土で装飾。実際にスイーツが盛られたうつわを見せながらの発表となりました。本来であれば、これにて終了。よく頑張ったね〜、なのですが…。


 その後、アイデアに磨きをかけ、4ヶ月かかりましたが、日生のカフェ「Stella Café」さんで、うつわを使用していただくことが決定しました。「みんなが考えてくれたアイデアを絶対に形にする!」との約束はきっちり守らせていただきました。大人の意地です。メディアにもお越しいただいた報告会では、関わってくれた生徒の皆さんをご招待し、オリジナルのスイーツを堪能してもらいました。


 2020年は、備前焼とともに日本遺産に認定されている「特別史跡 旧閑谷学校」の創学350年の節目であり、和気閑谷高校はその流れを汲む学校でもあります。このプレートは、その記念すべき年を盛り上げる意味合いも込めて、生徒の一人がデザインしていた「閑谷学校」の「楷の葉」をモチーフに、同じく「楷の葉」を使った塗土で、カラーリングを行いました。

 自分たちのアイデアが、実際にカタチになる。アイデアをポストイットに書いて、模造紙に貼るだけの世界で終わらないところを体感してもらえたかと思います。毎回楽しそうに作業をしてくれて、こちらも本当に楽しくなりました。ありがとう、和気高のみんな!


 プレートについては、山陽新聞にも掲載していただきました。現在も備前市日生町にある「Stella Café」さんで、スイーツを提供するプレートとしてお試し的に使用してもらっていますので、是非とも足を運んでみてください!注文時に一言そえていただけると登場するかと思います。



 「閑谷學」とのコラボレーションで制作した「閑谷 楷の葉プレート」は、「hozangama lab.+」でも取り扱っていますので、お買い求めいただくことも可能です。数量限定品ですので、これは!と思った方はお急ぎください。


 現在は、Season2の真っ只中。成果を引き継いだ6名(1名欠席)が、これまで以上にエッジの効いた展開で備前焼を盛り上げるべく奮闘してくれています。Season2についてはまた改めて紹介できればと思いますので、お楽しみに。



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